日本ハラール協会は、JAKIM(マレーシア)、MUIS(シンガポール)、BPJPH(インドネシア)、HAK(トルコ)及びGAC(湾岸諸国)とMOIAT(UAE)から承認・認定されたハラール認証団体です。
【活動報告】Global Halal Summit 2023、JAKIM Convention、MIHAS開会式への参加
2023/9/9-12 実施
開催場所:クアラルンプール マレーシア
2023年9月9日~12日、マレーシアでGlobal Halal Summit 2023が開催された。Global Halal Summit 2023とは、マレーシア政府 国際貿易産業省が中心となり、国策であるハラール産業の位置づけを国内外で強化するために毎年行われるイベントである。今年も、宗教省JAKIMが世界のハラール認証団体や関係機関を招集し、JHAからは理事長および副理事長が、JAKIM Convention、MIHAS開会式などの各イベントに参加した。
JAKIM Conventionは、ハラール認証やハラール産業における課題や新たな指針などが表明する機会として設けられており、それ以外にも、併催の国際ハラール展示会MIHAS開会式において首相や関係省庁のスピーチを拝聴し、各国の展示を見て回った。これらのイベントは昨年まではコロナ禍の影響でオンラインでの実施のみで、実地での開催は4年ぶりであった。各国の認証団体や関係機関の面々と懐かしい思い出を話しながら同窓会にでも参加したような雰囲気で執り行われた。
中でも一番注目されたのは、やはりJAKIM Conventionである。今回は認証団体や認定・承認機関のみの参加で一般参加はなかったため、テーマが限りなく我々が注目する内容に絞られ中身の濃い会議になった。
冒頭、マレーシア宗教省JAKIM代表Datuk Hajah Hakimah Binti Mohd Yusoff氏が代表挨拶をされ、続いてJAKIM Halal部門の代表であるMr. Mrzuki Bin Hasan氏の挨拶があった。イスラームの大切な信条や社会全体の利益への貢献についてお話された。お二人ともJAKIMを率いるにふさわしい人物であり、認証団体があるべき姿を示された。
そのあと、Conventionの1日目と2日目では、認定基準や各国のハラール規制に関与している「認定・承認機関」のスピーチが行われた。
「認定・承認機関」としては、JAKIMはじめマレーシア基準を作成するStandard Malaysia、インドネシアBPJPH、湾岸諸国GAC、サウジアラビアSFDA、トルコHAK、OIC諸国基準を作成するSMIICが参加していた。
中でも注目点としては、Standard Malaysia部 Shaharul Sadri氏がスピーチの中で、上記の各国認定・承認機関らがIFHAB(International Forum Halal Accreditation Body)という、各国の認定・承認を統合するための会を設立したと発表したことだ。これにより、認定基準ISO/IEC17065とSMIIC2を使用し、どの国から認定を受けようとも各国が相互に認めあうことができるようになる、という内容である。これは実現すれば、弊会のような認証団体が各国の認定・承認を受けるために年中作業に追われ、コストが膨大にかかり苦しんでいる状況を打破することができる、大きな希望でありこの上ない良い提案であった。また、これから2~3年以内には実施をしていくとのことであった。これは大いに期待したいと思う。
またそれらが実現されれば、マレーシアやインドネシアなどがこれまで頑なに拒否していたSMIIC基準を取り入れるということになり、この後の流れとして、SMIIC1が世界のハラール認証基準の標準となるということを意味する。念のため、話者であるMr.Sadriに確認したところ、例えばマレーシアへ輸出する場合は、マレーシア基準(MS1500:2019)を使用するのかSMIIC1を使用するのか、という問いに対して同氏は「当面はどちらでも受け付ける」との回答であった。ゆくゆくはマレーシア基準の使用をやめ、SMIIC基準だけを利用していく、ということを意味しているのだろう。
1日目2日目の「認定・承認機関」のスピーチに続いて、Convention 2日目の後半からは、「世界の認証団体」へとスピーカーがバトンタッチされた。アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、インドと、いずれも非イスラーム国家であり、ムスリムがマイノリティーな国々における認証団体の代表が発表をした。
弊会からはレモンが登壇し、「日本におけるハラール認証の課題」と題してスピーチを行った。日本におけるというよりは、世界各国共通してハラール認証における、と言いたいところであったが、あくまでも弊会の経験則によるという体でのお話とした。
内容は、それまでの認定機関の話と同じトピックではあるが、認証団体の視点ということで3点に絞ってお話をした。
例えば、今年初旬に在日本トルコ大使館から弊会へトルコ政府が新しく法改正し、ハラール認証に関する規制があることの通達があった。それにより認証団体と輸出される製品はトルコ政府に登録されなければ輸出が叶わない、という内容であった。それを受け、当方は即座に認証取得企業へ通達を行い、遅延なく輸出が叶うよう作業を早急に進めた。
本来であれば、各国の大使館は日本国外務省へ通達し、そこから各省庁へ割り振りされ、それをもって民間がそれに沿うよう動くのが通例ではないであろうか。トルコに限らず、マレーシア、湾岸、シンガポールも同様である。インドネシアだけが、昨今GtoGでの対応をしようとしているが、相手国の宗教省に対応する省庁が我国にはない、という理由で、日本側はGtoGの対応を行っていない。もはや、ハラール認証に関しては、宗教というよりも輸入規制と位置づけられていることから、農水省や厚労省などしかるべき機関で包括的に応対すべきであるが、今のところそのようにはなっておらず、民間の認証団体がその役を担わざるをえない状況である。
2日目の各国機関による発表の題名はまさしく「Trade Barrier(貿易障壁)」であったことから、現状ハラールに関する輸入規制はその解釈で間違いない、といえるだろう。
このように、本来であれば各国行政対日本政府であるべきところ、民間に直接アプローチされることの責任の重さに耐えがたいことから、各国は民間ではなく行政へのアプローチをする必要性を訴えた。
弊会のスピーチは、同じ思いを長年抱えていた世界中の認証団体から支持を得ることができた。「君はパンドラの箱を開けたね」とも揶揄され、そのあと続いた会議では、これまでの思いを抑えきれなくなった認証団体メンバーらが認定機関を責めるような議論へと発展させるきっかけにもなってしまったが、結果として、一方的な各国認定機関から要求が必ずしも現状とあっているわけではないことを知ってもらう機会となったことは有意義であったと思う。
また、これを機会に我々日本のハラール認証団体がやるべきことは、どのように今後日本において持続可能な組織維持をしていくのか、ということである。各国認定機関が今後、1国1団体の認定をする、ということも想定し、上述の認定機関による統合、認証基準の単一化、そして国内認証団体の統合は必然の流れであると考える。今後、われわれがするべきことは国内団体の統合である。すぐにはできないにしろ、目指す方向であることから確実に実現できるように、できることをできるだけやろうと思う。
理事長 レモン史視